養子縁組希望の夫婦が集まっての研修その1
夏になりました。
コロナでずっと開催出来なかった支援団体が主催する研修とワークショップが久しぶりに行われる事になりました。
この催しには、僕達のような養子縁組を希望する夫婦がやって来ます。
養子縁組なんて特殊ですし、中々身近にそういう人がいなかったりしますので、似た境遇の人達が集まるという事だけでも、何だか孤独じゃないんだって、ちょっぴり勇気を貰ったりします。
この催しは2日に渡って行われて、初日はワークショップでした。
大勢集まった夫婦をまず夫と妻に分けてそこから更に2チーム分けて、チーム討論会をして、話し合った内容を全体で共有するという形でした。お題は子供を貰ったらどんなふうに育てたいか?でした。
「今日も何かやらかしてくれるんでしょ?期待してますよ」
児童相談所のシェパードさんは、勉強の為見学に来られてました。ただ、久しぶりの研修だったせいか、楽しみたかったのか、ハッパをかけられました。
でも僕は同じ境遇の人からリアルな話が聞きたいと真面目に考えてました。きっと養子を取ろうと決めた時、凄く悩んだ筈だ。血の繋がりのない子供をどう育てたいか?きっとヒントになる考えを聞けるはずだ。
「もう一緒にゲームしたいね」
「あーしたい!したい!」
「キャンプなんかしたくありませんか?」
「うわー!絶対したい!」
「一緒にジェットコースター乗りたい!」
「乗りたい!乗りたい!もう大声出しちゃう!」
もっとハードな内容が聞けるかと思ったんですが、皆さん子供と遊びたいって事ばかり。
でもそれも当然だと思います。
実子のいる世のお父さんもきっと僕達と同じような話をするんだろうなって。
ただ僕達は実子が生まれなかっただけでお父さんになるのは変わりないのですから。
僕と同じようにお父さんになれなかった人達が親を必要としてる子供を迎え入れて家族を作ろうとしてる。
全然特別でもなく、当たり前のことなんだ。
同じ境遇の人達と触れ合って勇気が出ました。
さて、チーム討論が終わった後はそれぞれの夫婦に戻って、真実告知の実践練習でした。
真実告知とは子供に自分達は生まれの親でない事を告げる事をいいます。
僕達養子を貰う親にとって最大のハードルでしょう。
実践練習は真実告知する夫婦と子供役がいて、その状況を即興芝居を通して体現する形でした。
子供役はこの場に集まった夫婦の中から挙手した方がやります。
子供を演じる事で、いざその状況になった時子供はどう感じるのか、体現出来るので、とても勉強になります。
一度体現してみたいという夫婦と子供の考えを体現したいという希望者がステージに立って、僕達は真実告知の行方を見守りました。
「え?お母さんは本当の親じゃないの?」
「本当のお父さんとお母さんは何処行ったの?」
「どうして僕はここにいるの?」
即興芝居とはいえ、子役から矢継ぎ早に投げられる質問に真実告知をする夫婦は何も言えず黙ってしまいました。
見守る僕達も子役から投げつけられた質問があまりに真に迫っていて、下を向く事しか出来ませんでした。
家族を作る事は世間一般と変わらないのですが、養子で家族を作る事を選んだ僕たちは、やはり大きな違いがあるんだと、少し寂しい気分になりました。