新しい家族を養子縁組で迎えて

新米主夫のおやじによる養子縁組家族子育てブログ

訪問保育半日

「マスクはつけたままでお願いします」

 

乳児院からのお願いはこうでした。

 

まだまだ世間はコロナ禍でマスコミも煽ってるので仕方ありません。

 

でも、漸く会えた子供と触れ合うのに、顔半分隠したまま触れ合う事に。

 

家族になるダイナソーちゃんは僕を親と認識してくれるのだろうか?

顔も分からないから実際誰やねんってならないだろうか?

 

僕達がダイナソーちゃんと会えるのは半日のみ。

マスクも建前でちゃんとしなきゃと理屈は分かるけど、家族になりたいのに何このハードル…

 

「ブランコしに行こうか?」

 

訪問保育は僕達里親の希望で自由な事が出来ます。

と言っても半日だから出来る事は限られてますが、フリーな時間を与えられます。

前回教えてもらった公園で遊ぶ事にしました。

 

なっちゃんね」

 

前回と同じくリンゴジュースを買って距離を縮めようとしましたが、僕もダイナソーちゃんもまだ緊張していて

 

世の中には喜怒哀楽という感情もあったよな

 

と遠くをしみじみ眺めるようでした。

 

「さ、ブランコ乗って」

 

ダイナソーちゃんはブランコの鎖をしっかり持ってちょこんと座りました。

少し揺らしてあげましたが、やはり

喜怒哀楽を遠くに眺める顔で揺られてます。

 

「押さんとって」

 

僕がブランコの揺れにバイタリティを付けようとするとピシャと言ってきます。

ダイナソーちゃんは降りてしまいたした。

 

僕は変に出来てしまった間を埋める為にブランコに乗りました。

 

「ねえ、ブランコってどうやって乗るの?」

 

ダイナソーちゃんにブランコの乗り方をレクチャーしてもらおうとしました。

ダイナソーちゃんはブランコの乗り方を聞かれて、びっくりしたと思います。

でも一生懸命説明しようとしてくれました。

 

「えっとねー」

 

僕は振り子のように顔を揺らして彼の説明を聞きました。

 

「ハハハ!」

 

ダイナソーちゃんはロボットのように動く僕を見て漸くリラックスしてくれたようです。

もうお互いの緊張は何処へやら。

その後は2人で頭を揺らしながら仲良くブランコをしました。

 

「押さんとって」

 

平日は奥さんが仕事で僕が半日保育に行きました。

次は土曜日。

いよいよ奥さんも保育に加わります。

 

 

 

訪問保育1日目

正直告白します。

以前は産後鬱や育児に悩む母親がいるっていう話が理解出来ませんでした。

そんな親が事件を起こすニュースを他人事のように眺めてました。

だって大事な子供です。

ちょっとヤンチャしたって可愛いで軽く流せると思っていました。

でも今は育児に悩むお母さんの気持ちが凄く理解出来ます。

育児は孤独。子供に振り回され、親としての責任に板挟みになってもうヘロヘロ。

専業主夫の僕の現在は今そんな感じですが、これも変に慣れて初めて遊んだ時を忘れてしまったからでしょうか?

 

「あ、お父さんが主に通われるんでしたよね」

 

乳児院への訪問保育1日目。

受付に来た僕に保母さんはサラッと返しながらも、席を立って奥に行きました。

おそらく他の職員さんに確認しに行ったんでしょう。

 

なるほど。そりゃ初日にオッさん1人で訪問保育に来たら、念のため確認するわな。

うちは奥さんが働いて、僕は主夫。

養子縁組の為になった新米主夫だけど、子供が安心して家族に馴染めるよう、僕が頑張らねば。

新しい家族と暮らすと決めたんですから当然です。

 

「はいダイナソーちゃん連れて来ましたー」

 

職員さんに連れられて来たダイナソーちゃんはもじもじ僕を見ています。

 

「おはよう」

 

挨拶をしてももじもじしているダイナソーちゃん。

 

「いっといで」

 

職員さんに背中を押され漸く僕の傍に来てくれました。

僕は早速高い高いをしてあげるとすぐ喜んでくれました。

 

「今日は一緒に公園に行ってもらいます」

「分かりました♪」

「お父さんと2人で」

 

2人…

いきなりのマンツーマン保育。

のんびり構えてたので緊張が走りました。

 

「コッチ」

 

ダイナソーちゃんは楽しみにしてくれたようでよく遊ぶ公園に案内してくれるようです。

僕は抱っこしたままお外に連れ出しました。

 

「コッチ」

 

乳児院から出ると小さい手で指刺し僕を案内してくれます。

 

「コッチ」

「あ、ここ真っ直ぐね」

「コッチ」

「あ、ここ曲がるのね」

「コッチ」

「ん…?」

 

ダイナソーちゃんが刺したのはジュースの自動販売機でした。

 

「これ…」

 

ダイナソーちゃんはなっちゃんのリンゴ味を恥ずかしそうに刺してます。

 

あ、公園行く前に先ずはコレね。

可愛い道案内に僕の緊張も一気に溶けました。

 

まだコロナの影響で、子供に何か食べ物などを与えてはいけないんでしょうが…

 

「みんなに内緒やで」

 

乳児院にその辺りを確認してない事をいい事になっちゃんを買ってあげました。

おそらく初めて自動販売機のボタンを押したダイナソーちゃんはとても喜んでくれました。

 

父と子の初めての秘め事を共有した僕達は、公園に着くと早速ブランコに乗せました。

 

「押してー」

「よーし」

「もっと押してもいいよー」

「よーし」

「強く押さんとってー」

 

あまりの嬉しさにブランコを大人押ししたのを危険に感じて、ダイナソーちゃんは慌てて父を注意しました。

ごめんと謝る僕をダイナソーちゃんは笑って許してくれました。

 

まだ子供のペースが掴めない中、父と子の初お遊びはあっという間に終わりダイナソーちゃんを乳児院に返しました。

 

「ありがとうございます。ダイナソーちゃん楽しかった?」

 

保母さんの質問に

うん

と答えダイナソーちゃんは他の児童の輪の中に入って行きました。

 

「お父さん帰っちゃうよ」

 

保母さんは僕に気を使って言ってくれましたが、ダイナソーちゃんは次の遊びに夢中のようでした。

 

もっとぐずると思ったがそうでもないんだ…

 

ま、僕と初めての秘密を共有したんだし、これからもっと親密になって行こう。

 

今日の訪問保育の事を早く伝えなきゃ。

 

僕は奥さんの喜ぶ顔を想像しながら乳児院を後にしました。

 

 

 

 

 

新しい家族のダイナソーちゃんについて

彼は生まれて1年も経たずに保護されました。

原因は実親の育児放棄

それが漸く会えたダイナソーちゃんの生い立ち。

簡単に彼の経緯を書き記しておきます。

 

ダイナソーちゃんは栄養もとれてないガリガリの状態で児童相談所に保護され、即乳児院に入りました。

施設は色々な事情で実親と暮らせない赤ちゃんや、幼児が多数暮らす乳児院です。

通常子供の成長に合わせて児童養護施設に転々とするのですが、コロナ騒動のせいで移動する事もなく、乳児院でずっと暮らす事になりました。

ダイナソーちゃんはそこで成長し、もう幼稚園に通えるお年頃。

コロナ騒動により生まれてからほとんどの時間を隔離された施設で生活を送っていたという事です。

 

ダイナソーちゃんは、赤ちゃんの時からずっと保育園にいたような感じで家族を知らない子供です」

 

児童相談所から説明されました。

 

この時期に生まれたお子さん達はウイルス対策で自由に暮らせなかったと思います。

不安に支配された世の中の空気をかぎ取って子供達も不安だったでしょう。

でも寄り添ってあげる親がすぐ傍にいました。

ところがダイナソーちゃんは隔離された施設での暮らしだから親に甘える事も出来ません。

彼の実親は乳児院に保護された時は何度か通ったらしいですが、次第に来なくなり、すっかり音信不通になったとの事です。

甘えてもいい親という存在を彼は知らないまま彼は年中さんの年にまで成長しました。

 

「まずはダイナソーちゃんが安心できる家族関係を築くようにして下さい」

 

児童相談所からの言葉に身が引き締まりました。

と、同時に正直不安もありました。

 

今まで体験した社会状況の中で生まれた子供達に安心を与えてあげる事が僕たち夫婦に出来るだろうか?

適当に生きていて何も達成出来てない僕を彼は父親として認めてくれるのだろうか?

 

「先ずは乳児院に通って親子関係を少しづつ作ってもらいます。先ずは半日の保育から行ってもらいませ。焦らずにいきましょう」

 

こうして僕たち夫婦は乳児院に通いながら新しい家族との関係作りを始めました。

 

 

 

 

 

面会日その2

子供は連れられて来た保育士さんの手をぎゅっと握って僕たちをじっと見つめていました。

僕たち夫婦もじっと見つめるだけで声も出せません。

 

漸く子供に会えた…

 

おかっぱ頭に気合いの入った刈り上げが青々として、まるで昭和にタイムスリップしたようようでした。

 

「新しいお父さんとお母さんがむかえに来てくれたよ。」

 

大きなどんぐりまなこで静かに僕たちをじっと見つめるダイナソーちゃんに保育士さんが声をかけました。

 

「行っといで」

 

保育士さんがダイナソーちゃんの背中を押すと僕たちの元に歩み寄って来ました。

近づいてくる…。どうしよう。

焦る僕たちを気に留めずダイナソーちゃんは持って来たプレゼントの包みを手に。

そして袋の中を開けました。

 

「恐竜や!」

 

大きな恐竜のぬいぐるみを嬉しそうに抱きしめてくれました。

彼の喜ぶ顔に緊張は吹っ飛び、僕達も漸く安心しました。

 

リアルなフィギュアじゃなくてよかった…。

 

奥さんのチョイスに改めて感心し、ダイナソーちゃんの無邪気な姿を見守ります。

ダイナソーちゃんは一緒に持って来たプラレールの電車を手で動かして、恐竜のぬいぐるみと対決させてます。

 

「さ、そろそろ時間ですので」

 

面会時間は1時間程度と元々短かったのですが、あっという間でした。

記念写真を撮り、今日のところはひとまずのお別れになりました。

 

玩具で遊んだだけで全く触れ合ってない…

何かもの足りない…

 

昔、亡くなった父が幼い僕にしてくれた事を思い出しました。

僕はダイナソーちゃんの脇に手をあげ持ち上げました。

 

「うわ」

 

ダイナソーちゃんは一瞬どんぐりまなこが大きくなりましたが、すぐに高い高いをされてる事に大喜びです。

 

「天井、天井」

 

彼のリクエストに僕は更に高くダイナソーちゃんを持ち上げました。

 

「ついたー」

 

ダイナソーちゃんは手をついた控え室の天井を見上げてます。

僕も奥さんも見上げました。

 

さあ僕たち3人の家族のスタートです。

 

 

 

 

面会日その1

まだ寒さの残る朝でした。

新しい家族と初めて出会う面会日がとうとうやって来ました。

思い起こせば養子縁組で新しく家族を作ろうと決断したのは、寒さが始まろうとした冬の始まり。

僕らはそこから3度の冬に身を縮ませながらも、漸くこの日にたどり着けました。身の引き締まる思いです。

 

持ち物は新しい家族へのプレゼント、ダイナソー恐竜のぬいぐるみです。

 

「◯◯ちゃんの生い立ちを説明します」

 

子供の待つ乳児院に行く前に僕達は児童相談所に行き、初めて子供の生い立ちを聞かされました。

それまで聞かされてた事は子供の性格や病気など健康面が主で、具体的な踏み込んだ話は聞かされてませんでした。いくらマッチングするとしても彼の本当の母の事、父の事、彼が乳児院に引き取られるようになった経緯、それは個人情報の観点からか、面会当日迄明かしてくれませんでした。

 

「以上が◯◯ちゃんの生い立ちです。これを聞いてまだ家族になろうという気持ちは変わりませんか?」

 

児童相談所の職員さんの言葉が重くのしかかって来ました。

初面会に同席してくれてる、僕達を子供の家族に推薦してくれた支援団体のジャッカルさんも僕達を見守ってます。

 

プレゼントの恐竜のぬいぐるみをギュッと握りました。

恐竜の可愛いぬいぐるみ姿に僕の査定は最初は不可でしたが、家を出る時はもうバッチリ。きっと気に入って貰える。不安が確信になりました。

初めて会う子供とも最初は家族となるにはギクシャクするかもしれませんが、きっと恐竜のぬいぐるみのように、サクッとはまるようになる。

 

ダイナソー…。いや、大丈夫です」

 

児相の職員さんもジャッカルさんもニッコリ笑いかけてくれました。

 

こうして僕達は新しい家族のダナソーちゃんが待つ乳児院に着きました。

暖かな木のぬくもりのある建物の中に入ると、

 

「お待ちしとりました」

 

エプロンを付けた先ほど迄子供の面倒を見ていただろう乳児院の職員さん。

温かく出迎えてくださり、そのまま控え室に。

 

「子供を呼んで来ますね」

 

まるで旅館の女将さんのようにニコニコ笑顔を向けて、そそくさとダナソーちゃんを呼びに行きました。

控え室の畳の間が一層旅館感を引き立ててます。

 

いよいよ…

奥さんと僕はお互いの手をギュッと握りました。

 

「お待たせしました」

 

女将さんがドアを開けました。

見ると、保育士さんに連れられた子供がまんまるな眼を僕達に向けてます。

 

ダイナソー…。

 

これが僕たちの新しい家族との出会いでした。

 

 

 

初対面の用意

さて、今年の初めから始めたこのブログ。

ちょっと更新が途切れ途切れになってしまいました。

 

もともとは子供の主な養育者になる事になった新米専業主夫の僕が、育児の悩みなどをブログにしてアドバイスを聞けたらと思い始めたものです。

小さい子を育ててるママさん達は僕よりずっと若く、僕はおっさんですし気軽にママ友なんて出来ません。勿論僕のようなパパ主夫もいるのでしょうが、そもそもどう探していいのかも分かりません。

そこでブログを立ち上げてコミュニティを増やせればと思いました。

 

で、いざ立ち上げたものの、子供との生活が、まあ激しく、大変の3乗くらいの状況で、ブログを書く為にスマホを持つことすら出来ない状況で、半年以上過ぎました。

 

最近ではスマホを取る時間も少し出来たので、あ、何か◯ャニーズえらい事なってたんすね、育児友達を増やせたらと一抹の希望を胸にゆっくりですが再開しようと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 

前置きが長くなりました。

 

さて、小猿のような男の子とは年が明けてまだ寒さも厳しい2月に会う事になりました。

 

年末年始が挟んだとはいえ、彼と会うには数ヶ月も先。

僕たち夫婦はどう過ごしていいのか落ち着かず、ま、僕もブログを立ち上げたりしたんすが、どう初対面の日を迎えたら良いか分かりません。この手持ちぶたの期間は子供はなついてくれるんだろうかなど新しい生活の不安と期待で何をどうしていいかわかりません。

 

「何が好きなんだろ」

 

奥さんがボソッと呟きました。

丁度年末年始で玩具店が賑わいを見せた頃です。

 

「なるほど、玩具か」

 

子供との距離を縮めるにはとってもいい。

見ると玩具を買ってもらった子供がお父さんと手を繋いでます。

僕も間もなくこんな感じに…

 

早速僕達は支援団体のジャッカルさんに電話しました。

 

「なるほど…恐竜が好きと…」

 

僕と奥さんはトイザらスに出向き初対面にプレゼントする玩具を探しました。

 

「ちょっとそれ怖すぎるよ」

「いや、いくら玩具でもこれくらい造形に凝ってリアルな恐竜の方がいいんだよ」

「大きいお友達じゃないんだから、まだ四歳よ」

 

僕が選んだのはジュラシックパークのリアルフィギュアでした。

ハリウッド映画のフィギュアからなのか、緻密なCGの再現なのか、兎に角造形が細かくおぞましい。

流石アメリカ仕込みの恐竜、ダイナソー

イカすぜ。

 

「コッチにします」

 

奥さんは恐竜のぬいぐるみを持ってきました。

クマのぬいぐるみのような大きいサイズ。

大きくてもリアルフィギュアとは遠く離れた可愛い目が愛らしい、全然カッコよくないタイプでした。

 

「ダメだよ。恐竜は怖くないと」

 

奥さんは僕のこだわりを無視してあっさりレジへ。

何はともあれこれでプレゼントも用意出来ました。

いよいよ我が子との出会いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

承認待ち

愛の手に再度彼が載ってから一週間程経ちました。

支援団体から電話がありました。

僕は彼に何組が手を挙げてるか、支援団体さんが気を遣わすのも悪いので、何となく聞き出そうとしました。

 

「因みに今回は…」

「5組手が上がりました」

 

え。

支援団体さんから容赦ない数字を出されて、一気に背筋が凍りました。

 

「5組も。ですか」

「はい。いい写真を載せたおかげで沢山の問い合わせが来ました」

「よかったですね」

 

受け答えして取り繕うとしましたが、容赦ない現実にどんどん顔が強張って来ました。

 

「問い合わせ頂いた家族の中でパパ主夫さんのご家族が一番歳上です」

 

一番聞きたくない情報でした。

特別養子縁組は子供の為の制度です。

少なくとも子供が成人する迄は両親は元気でいなければならない。マッチングするなら若い家族の方が優位であるのは仕方ない事です。

でも不妊治療を続けて時間だけが過ぎ去った僕達年配の家族にとっては、分かるんだけどどうしても受け入れ難い現実としか言えません。

 

「選考させて頂きますので、改めて家庭訪問の面接を決めて良いですか?」

 

前回ライオンちゃんの件で面接を受けましたが、今回は別の子供の小猿ちゃんの事ですので、再び家庭訪問を受ける事になりました。

振り出しの感は否めないですが、前回は最初はチグハグだったとはいえ、ライオンちゃんのマッチング迄進んだんです。担当にはコチラの人となりが分かってもらってるので、他の夫婦よりも有利かもしれません。

意気込んで家庭訪問日をまちました。

 

「パパ主夫さん家族の担当は変わらせて頂きました」

 

来たのは前回の担当のレッサーパンダさんではなく新たな方で、犬科の険しいジャッカルのような風貌の方でした。

上手く転ばない。

ジャッカルの鋭い眼差しに緊張さながらもレッサーパンダさんの事をそれとなしに伺ってみると、なんとレッサーパンダさんは妊娠されたとの事でした。

 

「それは良かった」

「本来レッサーパンダさんが担当すべきなのですが申し訳ありません。レッサーパンダはパパ主夫さんに頑張って下さいと言っておりました。」

 

その言葉で胸が熱くなりました。

考えてみれば、ライオンちゃんとのマッチングが上手くいかない時、ご自身のお子さんを身籠りながらも、僕ら子供が出来ない夫婦の為に奔走してくれてたのです。

自分の周りには其々家族を大事にしている方達が、家族を欲しい家族の為に頑張ってくれてた。

そんな当たり前な事に改めて気付かされました。

 

レッサーパンダさんの応援に報いる為にも頑張らねば。

僕達は改めて養子縁組の面接に臨みました。

 

そしてジャッカルさんとの面接が終わりました。

他にも手を上げてる家族がいるとはいえ、支援団体から何の音沙汰もありません。

通知はハガキで来ると聞いていたので毎日ポストを気にしました。

気づけば家庭訪問から1か月過ぎました。

 

さすがに時間もかかり過ぎ。

ここで出遅れるとまた子供との出会いが遠のいてしまいます。

 

「直接支援団体に聞いてみる」

 

僕は止める奥さんを振り切りスマホを手にとりました。

すると、丁度そこにGmailが届いたのです。

アドレスは支援団体。

僕はメールを開けました。

 

小猿ちゃんはパパ主夫さんの家族をマッチングする事が決まりました

 

僕は思わず奥さんの顔を見ました。

奥さんは首をすくめて苦笑いしました。

 

「吠えないでよ」

 

思わず大声で雄叫びを上げた為に無駄に奥さんを驚かせてしまいました。

変な例えですが、今まで人生の中で懸賞に当選したことありませんでしたが、初めて当選した気分でした。