家庭訪問
貴重な3日間の研修が終わった後も、暫く面接は続きました。
面接が長く続いたのも、まだコロナで実習のスケジュールが決められなかったからかもしれません。
いつ実習が行われるんだろうと頭の片隅に不安を抱えてシェパードさんとチワワさんの面接を受けてました。
「養子取るとなったら、どっちかが家庭に治らなきゃいけないでしょ?だから即決で僕が家庭に入る事になっちゃいましたよ。だって奥さんに比べてスズメの涙にもならない収入なんだから」
「よ!収入格差婚!ギャハハー!」
「コロナで在宅ワーク増えるからってせっかく中古の一軒家買ったのに」
「買ったんじゃなくて買ってもらったでしょ?ギャハハー!」
「今は気持ちを入れ替えて、良い主夫になろうと、YouTubeのバズレシピ見て勉強してます」
「あ、そういや、家庭訪問まだでしたね」
シェパードさんは急に思い出したようにメモを取り出しました。
子供を家庭に入れて大丈夫か?夫婦2人が住む住宅の環境、病院、学校迄の距離などの立地環境など、子供を託して大丈夫か家庭訪問をして確認されます。
僕の料理の腕前を発揮出来るいい機会だぜと膝を叩きました。
「いや、あくまでも調査ですんで、そういうのは断ってます」
賄賂でもてなして点数を稼ごうとしたよこしまな考えは見透かされてしまいました。
そんな感じで後日公共の養護施設の職員のシェパードさんは児童相談所のドーベルマンさんを連れて家にきました。
「えっと2階を子供部屋にしようと考えてまして…」
「まだ子供部屋の事は考えなくていいです。最初はなるべく親の側にいられるようにして下さい」
印象を良くする為に奥さんの放った部屋計画もドーベルマンさんには通用しません。
いつもはゲラが多いシェパードさんも真剣です。
「ま、このくらいのリビングなら子供もゆっくりくつろげそうですね」
「うんうん」
ドーベルマンさんのチェックに印をつけるようにシェパードさんは頷きます。
「小さい子が遊べるくらいの広さの庭はあるんですね」
「うんうん」
「玄関出て直ぐの道は車の往来は少ないですね」
「うんうん」
安全な施設に預けられてる子供が、移って来ても問題なく生活出来るのか?
親になりたい夫婦はどんな人間か?に加えて、どんな所に住んでるか?等総合的に考えて里親の認可は下るようです。
一通り家の内見終えた後、シェパードさんは言いました。
「ようやくスケジュールが調整出来ました。次は実習です」