養護施設での実習
シェパードさんから養護施設の実習が行われると聞かされた時、思わず僕は近所のアパレルショップに駆け込みました。
「いらっしゃいませー」
その店は、オシャレな海外のアウトドアブランドを扱う店で、僕は当日来て行く服を購入しに来ました。
「えっと…それと…それ下さい」
実習は養護施設の幼児院に行って、子供達と触れ合って育児を体験するというものです。
その幼児院には親の養育が難しいとして、養護施設に一時あづかりされた未就学の子供が保護されてます。
実習の一時的な触れ合いとはいえ、思いっきり子供達と遊んであげたい。
そう思いアパレルに駆け込んだのでした。
「ちょっと、何でこんな高いノースフェイスのパーカー買ってくるのよ!」
買って来たものを見せたら奥さんに叱られました。
未就学の子供達にとってお父さんは大抵二十代、三十代前半です。
僕のような者が行ったらお爺さんだと勘違いしたら子供達が可哀想だ。
そう思い、涙を飲んで高額なノースフェイスに若さの願いを託してクレジットカードをきりました。(本当は前々から欲しかっただけなんですが)
さて、実習当日。
子供達はどんな反応するのだろう?
緊張のおももちをよそに僕達は幼児院に通されました。
「僕は〇〇です」
「私は〇〇です」
中に入った途端子供達が僕達の元に走って来て自己紹介を始めました。
幼児院のスタッフ以外の大人が珍しいのか、とても人懐っこかったです。
実習の内容は子供と遊んで、一緒に昼食を食べる。子供達と触れ合う事が実習の主な目的です。
僕達夫婦は直ぐに子供達と仲良くなり、一緒に遊びました。
「子供はすぐ抱っこしてと言ってくるから体力勝負ですよ」
シェパードさんは子育ては体力勝負と言ってきましたが、割と身体は鍛えてるので、そのへんは余裕でした。
「回してー!もっと回してー!」
子供達を抱っこした状態でクルクル回すと、テンション上げてくれるので、アクロバティックな抱っこを何度もしてあげました。
「キャハハー!」
育児放棄を受けてる可哀想な子供達が多いとの事でしたが、楽しそうに遊んでくれて実習とはいえ僕も楽しい時間を過ごせました。
こんな感じで1日目は楽しく終えました。
「だから、ノースフェイスやめておきゃ良かったのに」
泥だらけになったおニューの服を見て奥さんは口を尖らせました。
その日僕は勉強しました。
育児の時はそのファッションでいいか、一旦立ち止まって考えるのは必要かと。