承認待ち
愛の手に再度彼が載ってから一週間程経ちました。
支援団体から電話がありました。
僕は彼に何組が手を挙げてるか、支援団体さんが気を遣わすのも悪いので、何となく聞き出そうとしました。
「因みに今回は…」
「5組手が上がりました」
え。
支援団体さんから容赦ない数字を出されて、一気に背筋が凍りました。
「5組も。ですか」
「はい。いい写真を載せたおかげで沢山の問い合わせが来ました」
「よかったですね」
受け答えして取り繕うとしましたが、容赦ない現実にどんどん顔が強張って来ました。
「問い合わせ頂いた家族の中でパパ主夫さんのご家族が一番歳上です」
一番聞きたくない情報でした。
特別養子縁組は子供の為の制度です。
少なくとも子供が成人する迄は両親は元気でいなければならない。マッチングするなら若い家族の方が優位であるのは仕方ない事です。
でも不妊治療を続けて時間だけが過ぎ去った僕達年配の家族にとっては、分かるんだけどどうしても受け入れ難い現実としか言えません。
「選考させて頂きますので、改めて家庭訪問の面接を決めて良いですか?」
前回ライオンちゃんの件で面接を受けましたが、今回は別の子供の小猿ちゃんの事ですので、再び家庭訪問を受ける事になりました。
振り出しの感は否めないですが、前回は最初はチグハグだったとはいえ、ライオンちゃんのマッチング迄進んだんです。担当にはコチラの人となりが分かってもらってるので、他の夫婦よりも有利かもしれません。
意気込んで家庭訪問日をまちました。
「パパ主夫さん家族の担当は変わらせて頂きました」
来たのは前回の担当のレッサーパンダさんではなく新たな方で、犬科の険しいジャッカルのような風貌の方でした。
上手く転ばない。
ジャッカルの鋭い眼差しに緊張さながらもレッサーパンダさんの事をそれとなしに伺ってみると、なんとレッサーパンダさんは妊娠されたとの事でした。
「それは良かった」
「本来レッサーパンダさんが担当すべきなのですが申し訳ありません。レッサーパンダはパパ主夫さんに頑張って下さいと言っておりました。」
その言葉で胸が熱くなりました。
考えてみれば、ライオンちゃんとのマッチングが上手くいかない時、ご自身のお子さんを身籠りながらも、僕ら子供が出来ない夫婦の為に奔走してくれてたのです。
自分の周りには其々家族を大事にしている方達が、家族を欲しい家族の為に頑張ってくれてた。
そんな当たり前な事に改めて気付かされました。
レッサーパンダさんの応援に報いる為にも頑張らねば。
僕達は改めて養子縁組の面接に臨みました。
そしてジャッカルさんとの面接が終わりました。
他にも手を上げてる家族がいるとはいえ、支援団体から何の音沙汰もありません。
通知はハガキで来ると聞いていたので毎日ポストを気にしました。
気づけば家庭訪問から1か月過ぎました。
さすがに時間もかかり過ぎ。
ここで出遅れるとまた子供との出会いが遠のいてしまいます。
「直接支援団体に聞いてみる」
僕は止める奥さんを振り切りスマホを手にとりました。
すると、丁度そこにGmailが届いたのです。
アドレスは支援団体。
僕はメールを開けました。
小猿ちゃんはパパ主夫さんの家族をマッチングする事が決まりました
僕は思わず奥さんの顔を見ました。
奥さんは首をすくめて苦笑いしました。
「吠えないでよ」
思わず大声で雄叫びを上げた為に無駄に奥さんを驚かせてしまいました。
変な例えですが、今まで人生の中で懸賞に当選したことありませんでしたが、初めて当選した気分でした。