愛の手-その2
僕達はスクラップブックの記事の写真に目を止めました。
それは養子縁組を探す男の子の記事で、写真の中のちびっ子はスクラップブックで眺めてる僕達を見つめてくれてるようでした。
「この子は?」
「未就学の男の子です」
写真を確かめました。
それは暗い白黒写真でした。
暗くてハッキリしないのですが、小猿のようなクリクリっとした黒目の男の子だと思われます。
「ちょっとわかりづらい写真でしょ。記事は画像の悪い白黒ですが、アルバムにカラーの写真があります」
僕達は急いでアルバムをめくり、直ぐ男の子の写真を見つけました。
小猿のようなクリクリした目はカラー写真でも更に可愛らしく写真の向こうの僕達を見つめてくれます。
「丁度コロナが始まった時施設に預けられたので、行動制限が行われていた事もあって保護者になってくれる方がずっと決まりませんでした。」
コロナ丁度始まった時期は僕達が養子縁組で子供を貰おうとした時期です。
「今年から動き出そうと先日ようやく愛の手には載りました」
丁度僕たちがライオンちゃんに手を上げて家庭訪問受けてる時でした。
「問い合わせは少ししかありませんでした。暗くて分かりづらい写真でしょ。あまりいい写真じゃなかったせいもあって、やっぱり女の子がいいとか赤ちゃんがいいとか条件が合致しなくて、せっかく動き出したのに受け入れ先は決まってません」
養子縁組希望でも載っている写真でしか判断出来ないのであまり良くない写真だとせっかく載っても全くアピール出来ません。
僕は奥さんと目を合わせました。
「この子に手を上げて良いですか?」
コロナでやはり新しい家族が欲しいと動き出した夫婦と、コロナで施設に保護されたまま動けない子供。
何か運命的なものを感じました。
「かしこまりました」
担当者の笑顔の受け答えを見ていると、心なしか運命的な出会いをバックアップしてくれる様です。
「それでは、こちら支援団体で検討させていただきます」
行ける。
僕は確信しました。
「ただもう少し待って頂いて良いですか?」
「どうして?」
「今度愛の手に載る事が既に決まってますのでその後で」
「また載るんですか?」
「ええ。前回あまり問い合わせが余りに少なかったのも写真が悪かったからだと、もう一度撮り直して再度掲載しようという事が以前から決まってたのです」
良い写真が出来てしまうとライバルが増えてしまうかもしれない…
僕達夫婦は次の取り直しの写真も良い写真にならない様願い、彼の掲載を待ちました。
暫くして、彼が愛の手に掲載される日曜日がやって来ました。
その日、奥さんと二人でコンビニに行き、新聞を手に取りました。
レジの後急いで店から出るとすぐ新聞紙を広げ、彼の記事を探しました。
「あった…」
見つけた途端僕達二人は顔面蒼白になりました。
彼の写真はフルカラーで無茶苦茶可愛く撮れてたからです。
「確実にライバルが増えるな…」
曇り顔の僕たち夫婦を写真の少年は屈託の無い笑顔で見つめていました。