新しい子供を選んだ時の気持ち
資格をとって早速支援団体に問い合わせたのは2月。
支援団体のアルバムで選んだ子供は既に5才。
名前は仮にライオンちゃんとしときます。
彼は夏に6才になって次の年から小学生になります。
僕達の計画ではその年に親子関係を作って、小学校に送り出したい。それは支援団体も同じ気持ちでした。
でも一人の人間を預ける為、行政の色んな手続きに時間がかかります。
「お宅に預ける為、まずは私共支援団体の方で面接、家庭訪問を経て、そこからライオンちゃんを預けて良いか児相と会議を経て、それを経て漸く委託という形になります」
今回ライオンちゃんを担当してくれる支援団体の職員さんは説明してくれました。
仮に名前をレッサーパンダさんにします。
奥さんはレッサーパンダさんの言う事に大きく頷きますが、僕は正直不満でした。
養護施設と支援団体は違うとは分かるのですが、里親の資格取るまで1年近くかけた面接をまた再びしなければならないなんて…
「でもパパ主夫さんのお宅は既に養護施設の面接を受けてます。面接は1回程度で済ませて家庭訪問を直ぐして会議にかけるようにしましょう」
明らかに不満な顔をした僕に気遣ってかレッサーパンダさんはそう提案してくれました。
「早速今から面接しましょう」
レッサーパンダさんは気遣ってサクサク進めてくるます。
不満顔をアピールして良かった。
顔の作りが濃いのはこういう時に便利です。
「今回ライオンちゃんを養子にしてみようと思ったのはどうしてですか?」
いきなりのレッサーパンダさんの質問に戸惑ってしまいました。
他の子と比べてライオンちゃんが顔がしっかりしてたとか、年齢的に良かったとか色々あるのですが、言葉を選ばねばと思いました。
と、いうのも、支援団体が出されたアルバムからどの子がいいかと選ぶ形も人一人の人生を受け持つには何となくシュールで人身売買かとツッコミ入りそうな状況でしたし、いい感じのコメントを言わないと、紹介してもらえそうにないような気がしたからです。
「今回ライオンちゃんを養子にしてみようと思ったのはどうしてですか?」
言葉に詰まる僕達にレッサーパンダさんは再びざっくりした内容の質問をぶつけてきます。何か年齢的に大丈夫そうとか、可哀想な子供の為に今僕達が立ち上がらないといけないからですとか、どういう事を言って欲しいのか、この質問の真意が掴めません。
それなのにレッサーパンダさんは
どうしてですか?
と、ザックリした質問で僕達を追い詰めてきます。
「今回ライオンちゃんを養子にしてみようと思ったのはどうしてですか?」
とうとう僕はキレました。
「いや、どうしてとかザックリやめてもらえませんか? 貴方達に年齢的に赤ちゃんが無理で、僕が主夫で養育の中心になるから女の子は無理と言われて、条件にあった子がこの中でライオンちゃんだったんです。そういう回答で良いですか?」
支援団体には以前不妊治療の経験を問い詰められ、奥さんの辛い気持ちを思い出させたという苦い面接があったから、余計に僕の気持ちはヤカラにシフトチェンジしてしまいました。
そんな感じでレッサーパンダさんは僕のキレコメントに特に言及する事なく、次の家庭訪問の日どりを決めて面接は終えました。
終わった後、奥さんに僕の態度をこっぴどく叱られました。
確かに質問はザックリしてても、キレる必要はありません。
こんな我が事ながらこんな恥ずかしい僕が父親になっても良いのだろうか?
養子縁組の活動をして初めて自分が親になる自信が揺らぎました。